今年すしざんまいが初競りで最高値でマグロを買わなかったのは何故?




築地市場の初競りと言えば

毎年ニュースになるのは『すしざんまい』の社長が最高値で競り落とすことが風物詩となっていますが

 

今年は違いました!

 

今年の本マグロを最高値で落札したのは

水産仲卸「やま幸(ゆき)」(中央区)の山口幸隆社長で、青森・大間産の405キロが最高値の3,645万円(1キロあたり9万円)でした。

 

同社長のコメントは『年末に水揚げされた時から狙っていた。うれしい』との事でしたが、

今年は何故毎年恒例となっているすしざんまいの社長が最高値で競り落とすという事が無かったのでしょうか?

 

不思議に思い、調べてみるとなるほど!な理由が分かりましたので、今回はそちらをお伝えすると共に、マグロ漁師達の取り分や私個人の推測も一緒に読んでいただければ幸いですm(__)m

ここ10年間の最高値の記録

ここ10年間の記録をまとめてみました。()内はキロ当たりの値段です。

 

2007年 413万円 206キロ(20,000/キロ) 落札者:すしざんまい

2008年 607万円 276キロ(22,000/キロ) 落札者:板前寿司

2009年 906万円 128キロ(70,780/キロ) 落札者:銀座久兵衛と板前寿司(共同出資)

2010年 1,628万円 232キロ(70,170/キロ) 落札者:銀座久兵衛と板前寿司(共同出資)

2011年 3,249万円 342キロ(95,000/キロ) 落札者:銀座久兵衛と板前寿司(共同出資)

2012年 5,649万円 269キロ(210,000/キロ) 落札者:すしざんまい

2013年 1億5,540万円 222キロ(700,000/キロ) 落札者:すしざんまい

2014年 736万円 230キロ(32,000/キロ) 落札者:すしざんまい

2015年 451万円 180.4キロ(25,000/キロ) 落札者:すしざんまい

2016年 1,400万円 200キロ(70,000/キロ) 落札者:すしざんまい

2017年 7,420万円 212キロ(350,000/キロ) 落札者:すしざんまい

2018年 3,645万円 405キロ(90,000/キロ) 落札者:やま幸

 

となっています。

大きくニュースで取り上げられたのは2012年と2013年で、特に2013年は1億を超えたとニュースで大きく報道されました。

(2014年から値段が大きく下がっているのは、前年度にすしざんまいの社長が買うと決めたマグロはどこまでも値段を競ってくるために早々に競合が無くなったからだそうです(^-^;)

 

ちなみに今年、すしざんまいの社長が競り落としたマグロは

青森県大間産 3,040万円 190キロ となっており

キロ当たりの単価はなんと『16万円』(゚д゚)!

 

すしざんまいの社長曰く、『総額で負けちゃって少し悔しいけど、最高の質です』との事です。

マグロ漁師さん達の取り分は?

さて、ここで一般人としては素朴な疑問が出てきます。

売る側『マグロ漁師』はどれぐらいが懐に入ってくるのでしょうか?

 

通常であれば、漁師が釣った魚は地元漁港に水揚げされ近くの市場(産地市場)で競りにかけられます。

仲買人は競り落とした魚を消費地の市場に出荷し

ここで仲卸業者が買い付け、小売店に卸して消費者の食卓へ、という流れが一般的な魚の流通の流れです。

 

ところが大間産マグロのほとんどは産地を経ず、いきなり消費地の市場、築地市場に並びます。

 

これの考えられる理由としては2つの理由があります。

ひとつは仲買人が購入して売るには値段の予想がつかないからだと思われます。

先ほどの最高値の10年の記録を見ていただくと分かると思いますが、海のダイヤと称されることもあるクロマグロはその年によって競り落とされる値段が全く違います。

ご祝儀価格で買ってもらえるのか、通常通りの値段なのか分からない状況では仲買人にはかなりのハイリスクになってしまいます。

 

もうひとつの理由としては漁師の利益の話になります。

漁師側としては仲買人に無難な金額で買われるよりは直接、築地に出してご祝儀価格を狙う方が儲かりますよね!

そのかわり、通常なら仲買人が負担する梱包や輸送など、マグロの出荷にかかるコストや経費は漁師個人が負うことになります。

肝心の漁師さんの懐に入ってくる分は?

落札した仲卸業者(すしざんまいなど)は、競りを開いた築地市場側に代金を支払います。

築地市場側は手数料を引き、信用漁業協同組合連合会(信漁連)が管理するマグロ漁師名義の口座に現金を振り込みます。

漁協側の取り分や先ほど説明した漁師側の負担分『箱代、運送費など出荷コスト』を差し引いた分が漁師の取り分となり、調べたところによるとざっと8割台後半が漁師の取り分になるそうです。

そこからもちろん税金が引かれますが、半分以上は間違いなく懐に入ってくるようです!

何故毎年すしざんまいは高値でマグロを落札するのか?

今年は最高値ではないものの、キロあたりにすると16万円/キロ

かなりの高額でマグロを競り落としています!

 

冒頭にもお伝えしたとおり、毎年の風物詩となっていますが

取材陣も出るほど正月には恒例となっている『名物』です。

 

私が推測するに高値で買うことは『宣伝効果』を狙ったものではないかと考えました。

 

一般的なおはなしですが、TVCMの平均相場は調べたところ、下記のように計算されるようです。

(1回15秒放映するテレビのCM料金)

=8~15万円×視聴率

視聴率が15%とすれば15万円×15となるので15秒の放送で225万円もの広告費が発生するようです。

南英世の政治・経済学教室様より引用させていただきました)

 

プラス制作費も掛かってきますが、ここはCMによってピンキリなのでここでは計算しません。が、

 

初競りの日は朝からニュースで何度も特集が組まれ、高値で取引されたニュースを各局で5分以上の特集が何回も放映される、と考えると

(単純に秒で1万円とすると5分放送されれば300万円相当)

宣伝に対する『費用対効果』ってとんでもない事になりますよね。

 

TVの放映以外でも、Yahoo!ニュースや新聞、SNSなどでも毎年話題になるので、すしざんまいは常に有名ですよね!

 

マグロの寿司自体で利益を取るのではなく、そういった部分でも『元が取れる』のでやっているのだと私は推測しました。

 

今年は『築地最後の初競り』と言われています。

(10月に豊洲市場に移転するため)

最高値で買うのも良かったでしょうが、黙っていても〇年連続で競り落としただの話題にはなるので

そちらの話題では勝負せずに

 

あえて

『質の高いものを選んで買っています』

 

という事をアピールしたかったのでは無いでしょうか?

まぁ、高値で競り落としている事には変わりありませんが…

マグロの初競りはみんなが幸せになれる!?

以上の事からクロマグロの初競りに関しては漁師、仲買人、仲卸業者全員に利益が出る『お祭り事』となっています。

 

消費者は良いものを安く提供してもらい

生産者は1年に1度の『ご祝儀価格』をもらい

提供する側は1年間の利益を手に入れる為に『ご祝儀』がわりに『宣伝広告費』をリーズナブルに払う

 

これぞ『win-winの関係』だと思います!

 

私の住んでいる地域にすしざんまいは無いので、このお祭りとはほぼ無関係ですが…(^-^;

 

誰も損するような『お祭り』ではないので、こういった『お祭りごと』がマグロ以外でも増えてくれればもっと経済は活性化してくれるんじゃないでしょうか?

 

最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m

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