数年前に献血の際にセンターの方から説明を受けてドナー登録をしていましたが
つい先日、骨髄提供を望んでいる方と『適合しました』との通知が届きました。
登録の際に簡単な説明を受けて何かしら人の為になれるなら、と簡単な気持ちで登録しましたが
蓋を開けてみると私の置かれている状況では、骨髄提供をする事が実に困難な事がわかり
結果的には残念ながら骨髄提供を断る形となりました。
今回は骨髄提供を断る事になってしまった経緯をお話しながら、これからドナー登録をしようとお考えの方には是非知ってもらいたい事項をお伝えします。
骨髄提供は完全なるボランティアである事
ドナー登録をする際に献血センターの係員から多少の説明は聞いていました。
『3~4日程入院するぐらいなので想像している程大変では無いですよ~』
今回オレンジ色の封筒が届いた私の頭の中にはその説明が思い浮かんでいましたし、一緒にドナー登録をした妻も同様の考えでした。
ところが提供をされたドナーの方の情報をネットで検索してみると、そう簡単な話ではない様子でした。
最低でも7回は病院に行く事になる
提供するまでに病院に通う回数は調べたところ、7回は行く事になるようです。
1回目:説明と事前検査、意思確認のため病院に行く
2回目:最終確認のため病院に行く(家族同伴・弁護士立ち合い)
3回目:精密検査のため病院に行く
4、5回目:自己血の採取のため病院に行く × 2回
6回目:骨髄提供の手術のため、3泊4日の入院
7回目:術後検診
と、手術以外に6回は通院をする事になります。
手術費や入院費など一切の費用は患者さんの負担になるので、こちらで支払をするような費用はありません。
交通費と、テレビカードなどの費用として5000円の支度金がもらえるようです。
骨髄提供の際の術後について不安を覚える
骨髄提供の際の手術は全身麻酔で行います。
手術の内容を調べるとこのように出てきました。
骨髄移植の手術は、腰のあたりに2本の、お箸くらいの太さの針を骨髄に刺します。
一度、刺した場所からは少量の骨髄液しか取れないため、皮膚に刺した穴はそのまま抜かず、角度を変えながら骨髄に100か所以上の穴をあけながら骨髄液を採取します。
全身麻酔なので、術中の痛みはないようですが
(そもそも痛くても別にいいとは思いますが)
術後に痛みが残る事がある。
そして、重量物を持つような動作や重度の運動は最低でも1週間は控えなければならない。
体験記を書かれている方の中には1ヶ月以上重いものを持てなくなった方も居ました。
(痛みが長く残る方や、術後に稀に後遺症として残る方も居られるそうです)
デスクワークなどの仕事ならともかく、重労働が主な仕事の私にはリスクが少し多すぎると感じました。
ここで断る理由になった一つ目の問題が発生します
ボランティアになるので、仕事を休んだ等の補償、いわゆる休業補償などはありません。(自治体によっては補助金を出している自治体もあるようです)
ここで私の置かれている環境がハードルとなって立ちふさがります。
私は規模は小さいですが、とある建築関係の会社を経営しています。
近年の住宅新築需要、災害の対応などで春先からほぼ休みなどなく仕事に追われています。
また、経営者であると同時に作業員でもあるので、私が不在である事は色々と弊害が出る事は明白でした。
ドナーの適合のお知らせが届いた時に、当然ですが悩みました。
協力業者さんや、お仕事を頂いている各関係者に事情を説明し
私がドナーになる為に何度か休業をするかもしれないという事をお伝えしたところ、
『OK』と言った方は残念なことに、ゼロでした。
故に私がドナー提供をどうしてもしたいのなら
技術応援を頼むか、下請けに仕事を出す事になってしまいます。
仕事の質も変われば、本来私がその仕事をする事によって発生する利益等も全て無くなる事になります。
生々しいので金額ははっきりと言えませんが、かなりの利益を捨てる事になります。
10万や20万といった金額ではありません。
かといって、もちろん患者さんにその金額を提示するのはお門違いですし
(患者さんとコンタクトは取れないように厳重なシステムがあるので無理な話ではありますが)
『骨髄提供をする事は色々な方の協力がないと不可能に近い』という結論になりつつありました。
家族からの同意が必要であること
この点に関しては献血センターの係員さんから説明が無かったと記憶していますが
登録は個人の意思で出来ますが、提供の際には家族の同意が必要となります。
Q.骨髄・末梢血幹細胞の提供に、家族の同意が必要なのはなぜですか?また、「家族の同意」の範囲はどこまでですか?
A.ドナー候補者は成人ですから、法的にはご家族の同意は必要ありませんが、実際にはご家族などの支援・協力が不可欠です。
また骨髄・末梢血幹細胞の提供の直前に、ご家族の強い反対でドナーが同意を撤回すると、患者さんは致命的な状況に陥ってしまいます。
そうした最悪の事態を招かないためにも、ご家族の同意が必要です。
最終同意面談は、未婚の方はご両親、既婚の方は配偶者の同席が原則です。
同席者がいない場合や、やむをえない事情があるときは、コーディネート開始後、コーディネーターにご相談ください。
引用:日本骨髄バンク、ドナー登録についてより引用
まず届いた封筒の中の書類を妻や子供達と一緒に読みました。
ネットで体験記などの情報も一緒に調べました。
提供を受けたがっている患者さんの情報は、こちらが最終同意をするまでは一切の情報は教えてもらえない事。
もしかすると自分の子供達と同じような年齢かもしれない。
私以外適合者が居ない可能性もあり、私が断る事によってその人の未来が無くなってしまうかもしれない事。
自分の家族が同じような状況になった時に因果応法となってしまうかもしれない事。
様々な考えが頭をよぎり、子供達や友人達とたくさん話をしました。
それでも、やはり出た結論は『私の置かれている環境では提供する事は難しい』でした。
結論が出たその後
正直な話、近年ここまで悩んだのは久しぶりでした。
人助けのつもりで、ものすごく軽い気持ちで登録してしまった事を後悔しました。
自分がその患者さん本人、もしくはご家族だったらと考えると適合者が見つかったという『ぬか喜び』をさせた可能性もある訳です。
ただ機械作業のように書類を返送して、『骨髄提供を拒否します。』という事だけはしたくなかったので
直接電話をして、断る意向をお伝えしました。
そして、また提供を出来るような環境になったら改めて再登録させていただきます。と伝えてドナー登録も解除しました。
これが良い選択だったのかは分かりません。
ですが、受付をしていただいた担当の方はよくある話ですからお気になさらずと言ってくださいました。
考えすぎかもしれませんが、当分こんな思いはしたくありません。
この記事を読んでいただいた方が同じような思いをされないよう、少しでも参考になれば幸いです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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